エイスクエアで毎月子ども向けのワークショップを開催している、滋賀ものづくりネットの浦谷さん。
もともとは「まだ駆け出しの作り手が発表できる場をつくりたい」と手づくり市を立ち上げたのがきっかけです。活動内容を変化させながら、現在まで長く続けてこられた原動力は何なのか。浦谷さんの温かいまなざしをのぞいてきました。
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滋賀で手づくり市をスタート 想いをカタチにしていく
家業が琵琶湖の漁業だったため、私も漁師をしていました。平日は漁に出て、土日は販売に出かける日々。そんな中、個人や小規模で活動している人から「まだ駆け出しだから販路がなくて…」という同じ悩みを聞くようになりました。私も販路を広げるため、京都・知恩院の手づくり市に出店していた頃です。「そうだ、滋賀にはまだ若手のものづくりを見てもらえる場がない。滋賀にも京都の手づくり市のような発表の場をつくろう!」と考えたのです。
最初に苦労したのは、開催する会場の確保と、出店者・参加者の募集でした。会場探しはいろんなところに断られて難航しましたが、最終的に栗東芸術文化会館さきらの野外広場を借りることができました。また出店者は手づくり市で知り合った友人などに声をかけ、参加者はポスティングを繰り返す地道な活動で集客。2006年10月に開催した第1回目「滋賀がいいもん市」には、パン、ケーキ、野菜、陶器、布製品、手作りアクセサリーなど多彩な70店舗が集まり、たくさんの人で賑わいました。それまでの人生にはなかった、自分で何かを生み出す面白さを初めて知った瞬間でしたね。
一人では何もできない 多くの人とのご縁が活動の源に
その後、栗東さきらの担当者から地域プロデューサーを育てる「おうみ未来塾」を紹介していただき、2年間さまざまな地域課題の解決にも取り組みました。さらに「おうみ未来塾」を運営する淡海ネットワークセンターの方からNPO法人化を勧められ、手づくり市の活動をNPO法人化することに。私が「手づくり市をやりたい」と思ってから、多くの人とのご縁があって実現し、広げていくことができたのです。
「滋賀がいいもん市」は2006年から2016年までの10年間、毎月1回開催しました。出店者や参加者は年々増え、ピーク時には150店舗が並ぶ大きなイベントに成長。また栗東国際協会の交流イベント、地域の保育園児・幼稚園児たちの発表会、地域のオーケストラの発表会など、さまざまな地域イベントとのコラボも増えていきました。私もスタッフも若かったので、早朝から集まって設営し、夕方まで運営に奔走するというハードなスケジュールでもすごく楽しかったですね。70店舗あれば、70人の出店者とお話できる。150店舗の時には出店者とお話しているだけで1日が経ってしまうほど。本業の漁師ではこんなに多くの人と出会える機会がないですから、私にとっては人生が変わるようなカルチャーショックでした。また、駆け出しだった出店者が自分のお店を持つなど、ステップアップする姿を見られるのも嬉しいことでした。
子どもたちのワクワクを一緒に育てていきたい
少しずつ変化を感じるようになったのは2011年頃です。ゲリラ豪雨や熱中症が増え始め、野外でのイベント開催に対する安全管理が厳しくなりました。そこで夏の暑い時期は夜に開催するようになり、後の栗東駅前夏祭りにつながっていきます。また「滋賀がいいもん市」が滋賀の手づくり市ブームの火付け役となり、他にもたくさんの手づくり市が生まれて作家さんの活動範囲が広がっていきました。私自身も子どもができるなど生活の変化があり、2016年以降は活動をセーブしていたところ、コロナ禍ですべての活動をストップすることに。その当時、いろんな方から「またやってほしい」という声をいただいたのは大きな励みになりました。
そして活動を再開した現在は、作家さんと子どもたちを繋ぐワークショップ「30分ものづくり教室」をメインに行っています。エイスクエアで毎月1回開催しているのをはじめ、地域のイベントに参加することも。これは室内でできるので、天候に左右されないのも魅力です。何より、子どもたちがすごく喜んでくれるのが嬉しい。参加してくれる人も、主催する側も楽しいから、やめられないんです。
エイスクエアではこの1年、SDGsをテーマにしたワークショップを開催してきました。今後もものづくりを通じて季節ごとの行事に意識を向けてもらったり、自分でつくる楽しさを知ってもらったりしながら、綾羽さんと一緒に未来へ羽ばたく子どもたちを育てていけたらと願っています。
▲活動予定などはホームページにアップされています。
(2024年2月取材)