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琵琶湖発人間探訪

大江良一さん
大江良一さん
マスターズ陸上・短距離選手
大江良一さんを訪ねて

 18歳以上の人が参加できる日本マスターズ陸上において、 55歳のときに100m12秒21で全国大会初優勝。
以来7年間トップを走り続けている大江良一さん。
年齢を重ねながら挑戦する、その面白さを教えていただきました。

大江 良一  おおえ りょういち
滋賀マスターズ陸上競技連盟 常務理事
小学生陸上教室 らんクラブ 主宰
全力疾走に挑戦講座 講師

【競技歴】
2009-2013 マスターズ陸上・全日本選手権
55歳クラス/100m・200m 優勝
2014-2015 マスターズ陸上・全日本選手権
60歳クラス/100m・200m 優勝
2015 マスターズ陸上・世界選手権フランス大会
60歳クラス/100m 4位・200m 6位
2011・2013-2015年度大津市スポーツ賞受賞
2013年度滋賀県民スポーツ賞受賞

50歳で魅せられたスプリントの疾走感

 マスターズ陸上に出場して12年、私はよく「きれいな走り方をしている」と言われます。 短距離走は体の軸と足の接地タイミングが大事で、自分の軸より前に足をつくとブレーキがかかり、 後ろだとつんのめる。真下に接地するのが良いんですね。私は無意識にそれができていたようで、 幼い頃から足は速いほうでした。ただ陸上には興味がなく、中学で卓球、高校で軟式野球、 その後はスキーをする程度でした。
 走り始めたのは40歳過ぎ、旧・志賀町に引っ越して地域の運動会に出たのがきっかけです。 年齢の割に足が速く、周りの人から「100m何秒で走るの?」と毎年のように聞かれるので、 一度ちゃんと走ってみようと50歳で滋賀マスターズ選手権大会50〜54歳クラスに出ました。 結果は100m13秒10で1位。大会で実感したのは、トラックで風を切って走る気持ちよさです。 スーッと走ってゆくと景色が後ろに飛んでいくんですね。翌年秋の全国大会では17 、8位くらいで、 もっと上を目指して頑張ろうと意欲が湧きました。
 最初は練習方法さえ知らなくて、いろいろな本やインターネットの情報を参考に自分なりの方法を確立していき、 トレーニングを重ねました。だんだんタイムが縮み、翌年には全国大会の順位が1桁台に、 そして55歳で初めて100m・200mともに優勝することができました。

走ることで全国へ 世界へ広がってゆく人の輪

 それから3年、秋の全国大会出場後に腰部脊柱管狭窄症を発症しました。 背骨に囲まれた神経の束が軟骨と靱帯に挟まれて圧迫され、 足などが痺れるんです。ストレッチや体幹トレーニングをして3カ月で 何とか走れるようになったものの、痺れは多少残ったままでした。
 しかし、そこで走ることを辞めようとは思いませんでした。 走り始めてから全国に200人を超える仲間ができ、 休養中もフェイスブックに彼らから陸上の話や励ましのメッセージが届いていました。 復帰後しばらくは良いタイムが出なくて不安でしたが、 翌年の全国大会では60m・100 m・200mの三冠を達成できました。 やはり仲間がいると走る楽しさは倍増しますし、モチベーションにつながりますね。
 その仲間の一人に誘われたのが、去年にフランスで開かれた世界マスターズ大会です。 とりあえず行ってみようと出場したら、面白かったですね。フランスやイギリス、 ドイツなどヨーロッパの選手が多く、言葉は全然通じないのに、 走り終わったら自然と握手したり、肩を組んで記念写真を撮ったりするんです。 100m決勝の結果は4位。3位までの差はわずか100分の2秒で、メダルも近いと自信がつきました。


60代はまだ中堅 これからもチャレンジを続けて

 日本人の場合、短距離走は年齢が高いほうが有利だと思います。 60歳ぐらいまでは筋肉のついた欧米人が速いけれど、 彼らの筋肉が落ちてくる年齢になると、アジア勢が速くなります。 きれいな正しいフォームで、少ない筋力でも速く走ることを追求していますから。
 私自身は、タイムは7、8年ほぼ変わらず、 保っています。疲労がたまるとケガにつながるので、 短い時間で質の高いトレーニングを心がけ、毎日しているのは自転車通勤くらい。 それでも片道約3キロあり、短距離走に必要な太もも裏の筋肉が鍛えられます。
 マスターズ陸上では、90歳から始めた105歳の方が走っていますから、 私は中堅、まだまだこれからです。今年は全国大会の連覇、そして世界大会での表彰台が目標。 また、幅広い年齢層を対象に指導者としても活動しているので、 今年は日本陸連公認のジュニアコーチの資格を取ろうと考えています。 走る楽しさをこれからも広めていきたいですね。


(2016年3月取材)
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