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幼い頃に慣れ親しんだ、雛人形の雅な世界
平安時代から江戸時代、そして現代へ。
形を変えながら長く継がれてきたお雛さんの世界に、
私はごく幼い頃から触れてきました。お雛さんはお顔、髪の毛、
衣装など分業で作られます。私の父はそれらをまとめ、総仕上げする役をしていて、
よく私を職人さんの工房に連れて行ってくれたのです。
職人の鮮やかな手さばきに見とれ、糸や和ばさみといった道具にも馴染んで、
将来はこの道に進むのかなと思っていました。 琵琶湖の色を映したような、湖東の伝統織物を創作雛に
重い症状に苦しみ、人に会うのも億劫になって引きこもりました。ただ、
お雛さんを作っているときだけはリラックスできるんですね。治療薬で症状を抑えつつ、
いくつも作りました。精魂込めた人形は業界の展示会で「全国人形通産大臣賞」を受賞。
周囲の励ましもあり、病気とは長く付き合っていく覚悟で2002年、
30歳で祖父の故郷・五個荘町に店舗兼工房を構えました。 作り手、贈る人の心を込めた
雛人形をこれからも
私が手がけたお雛さんは、滋賀県からの親善の贈り物としてブラジル、
中国など海外にも渡りました。また2012年には東北復興支援にと人のつながりを表した「絆雛」を宮城県岩沼市に寄贈、
以後も毎年復興の歩みに合わせたものをお贈りしています。
オーダーメイドでは顔立ちや衣装など個々の希望に、そして贈る人の気持ちに寄り添って、 長く愛される雛人形を作るよう心がけます。職人のこだわりは多々あって、 衣装を着せつける際のバランスもその一つ。生地そのものの曲線を活かす柔拵えと、 直線的なラインを出す強拵えという技があるんですね。この二つを微妙に融合させ、袖はふわっと柔らかく、 襟元はきりりと整えます。これは独自の手法です。 住環境や暮らし方が変わり、段飾りを求める人は多くありません。 そういう時代にもっとお雛さんに注目をと、平安貴族が着ていた黒紫を再現して着せたり、 洋室にも合うお雛さんを作ったりと伝統文化を守りながら意欲的に新しい取組みもしています。 私はお雛さんを作るのが何より好きなんです。今までしてきたことを大切に、 次にどうするかを楽しみながら考えて、人形づくりを続けていきたいですね。 (2015年11月取材)
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