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伝統工芸との出会い
私は「浜仏壇」の塗師の家に生まれました。
「浜仏壇」とは、滋賀県長浜市を中心として生産されている仏壇で、長浜で行なわれる日本三大山車祭り「曳山祭」の山車を模って作られることが特徴です。
学生の頃は家業への関心が薄く、一旦は銀行に就職する道を選びました。しかし、一般企業に勤務する中で、家業の素晴らしさを改めて感じることができ、
父の跡を継ぐ決意を固めました。 現状維持ではなく、新たなチャレンジを大切に
技法を習得する中で、私は常に新しいことにチャレンジする姿勢を大切にしてきました。
一人前に仕事ができるようになった今でもそうです。例えば、5年前には漆塗りの知識を深めたいと思い、約2年間、神奈川県まで通って「乾漆技法」の習得に挑戦しました。
「乾漆技法」とは、麻布を幾重にも糊漆で貼り重ねて素地を作る技法のことです。普段とは違う環境に身を置き、異なる道具や手法で技法を学ぶことは、
スキルを高める上でとてもよい刺激になりました。 新たな挑戦「長浜工芸研究会」の立ち上げ
新たなチャレンジの一環として、平成22年4月に立ち上げたのが「長浜工芸研究会」です。
長浜には曳山文化に育まれてきた高度な工芸の文化があるにも関わらず、技術を生かした工芸品の需要が減少しています。
そこで、長浜を中心に活動する職人や工芸家に呼びかけ、自らが代表となり、「長浜工芸研究会」を立ち上げました。
メンバーには木工や金工など様々な分野の職人や工芸家がいます。研究会では工芸技術の研鑽を高めると共に、
現在の生活にマッチする工芸製品を創造する研究を重ねています。
「ギャラリー八草」の運営 ギャラリー八草は工芸に関する人やモノ、情報の交流拠点であり、作り手と使い手を結ぶ役割を持たせたいと考えました。
”八“は「たくさん」を意味し、”草“には「地道に活動する職人や工芸家」の意味を込めました。ギャラリーでは、
湖北地域を始めとする滋賀県内の作家の作品を中心に展示しています。また、単なる工芸製品の展示、販売だけでなく、ワークショップも開催しています。
お箸やお椀の製作のほか、陶磁器を修復する「金継ぎ」も人気があります。これは割れた陶磁器を接着し、繕った部分を金で装飾していく修復技法です。
実際に割れた陶磁器を持参いただき、修復しながら技法を学んでもらいます。ワークショップを通じてものづくりの楽しさや面白さを体験してもらい、
伝統工芸への関心を深めてもらいたいと考えています。 今後について
「長浜工芸研究会」の活動を通じて、皆さんに伝えたいことがたくさんあります。「金継ぎ」のワークショップでは、元来、
日本人の特徴として根付いていた「よいものを修復して長く使う」文化を広げることも狙いとしています。
少し値は張っても、お気に入りの作家さんの食器を見つけて、長く大事に使う人が増えて欲しいと思います。 (2013年3月取材)
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