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くつ・かばん創作室『SOUSOU』東野 有見子さん

くつ・かばん創作室『SOUSOU』
東野 有見子さん
くつ・かばん創作室『SOUSOU』東野 有見子さん
今回は近江八幡市の地場産業である『八幡靴』の革靴職人として、また皮革製品創作教室の主催者として活躍されている『SOUSOU』東野 有見子さんを訪ね、八幡靴への熱い想いを伺いました。
くつ・かばん…創作室「SOUSOU」
住所 :滋賀県近江八幡市桜宮町201−4
電話 :0748-34-4334
営業時間 :10:00-17:00 (土・日曜日のみ営業)

手縫いの高級品「八幡靴」
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東野さんが初めて作られた八幡靴

八幡靴は、履きやすくガッチリと仕上げた手縫いの高級品として知られています。
近江兄弟社の創設者であるW・M・ヴォーリスがアメリカ帰国の折、滞在先のシカゴで愛用の八幡靴を修理に出した時、こんな素晴らしい靴は見たことがないと現地で大変感心され たという逸話も伝えられています。

八幡靴の職人になるまで
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刃を研ぐのも
大切な作業だそうです

私が八幡靴を知ったきっかけは、「ここ近江八幡では八幡靴といって、昔から靴の製造が盛んだったんだよ。」という父からの一言でした。もともと私はものづくりが好きで、自分で商品をつくり販売したいという思いが芽生えていた頃だったので、父に聞いた八幡靴に興味を持ち、八幡靴職人に技術を習うことにしました。
 私が八幡靴の伝統を守る『コトワ』さんの門を叩いたのは31歳の時でした。男性の職人がほとんどである中の入門ではありましたが、大量生産の波に飲み込まれ、職人の高齢化も進 み、伝統的産業としての形を少しずつ失いつつあった革靴づくりを残していきたいという職人さんの想いもあり、なんとか弟子入りを許されました。
 私は三年間の修行時代の中で伝統的な『底付け』という工程を習得しました。八幡靴づくりは、『甲革づくり』と『底付け』の二つの工程に分かれます。『甲革づくり』は文字通り足の甲の部分など靴の上部をつくる工程で、私が勉強していた『底付け』は出来上がった甲革に靴底を縫いつける工程です。靴の形を整えるための重たい木型が入った靴本体と革製の底部を縫いつける作業は、手で一針一針縫っていくため、全ての工程の中で最も腕力を必要とします。また、糸で縫合した靴底は包丁やヤスリで丁寧に何度も削って滑らかにします。さほど人目には触れない部分ですが、だからこそ手を抜かず心を込めて丹念に仕上げていきます。
 修行時代の三年間は私にとって、ものづくりと真摯に向き合うことが出来た切な時間となりました。

手づくり創作室 SOUSOUがオープン
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包丁やヤスリで丁寧に何度も
削って滑らかにします

私が靴工房『コトワ』さんから独立して、革製品の手づくり創作室『SOUSOU』をオープンさせたのは、2006年のことです。八幡靴の伝統を守りながら、手づくりの良さを多くの人たちに伝えていきたいと思ったことが開店の動機でした。お店の名前である『SOUSOU』には、装う・創る・Sawing(縫う)という意味を込めています。
 現在、お店ではオーダーメイドで八幡靴の製作を承っています。その中で大切にしていることは、実際に使っていただくお客様にいかに納得していただけるものをつくれるかという点で す。まずお客様のご要望をじっくりと聞くことから始まり、足型をつくり、デザイン・色・素材を決めて製作に取り掛かります。お客様の足は一人ひとり、また右足左足も違う形なので、ぴたりとサイズの合う靴をつくることは本当に難しいことです。その人の足の形、靴を履いた時の感触などを確かめて何度もつくり直して完成します。大量生産の既製品では実現できない、お客様からの細かい要望にお応えできることが手づくりの一番の強みだと感じます。

ものづくりに対する熱い想いを伝えたい
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手づくりされた靴が
店内に展示されています

『SOUSOU』ではものづくりの大切さ、そして何より楽しさをより多くの人々に知ってもらいたいという私の強い想いから、八幡靴の製作だけでなく、革製品全般の創作教室も開いています。
 最近では手作業で一から何かをつくるという機会が非常に少なくなっており、ものづくりに対する興味が年々低下しているように感じます。私は毎年近江八幡市内の高校に出向いて革製品の製作講座を開いていたのですが、その際にも年々生徒の作品を完成させるまでの根気や集中力が無くなってきていると感じていました。ものづくりが得意だったはずの日本人の素晴らしい気質がどこか失われてきたようで少し寂しさを感じていました。
 手づくりの温かさは何ものにも代えがたいものがあります。これからも多くの方々に手づくりの良さを伝えていきたいです。また、近年八幡靴の職人が激減しており、伝統的な革靴づくりの技術を後世に伝えていくことも大切な使命であると感じています。とはいえ、一人前の革靴職人になるには一生の勉強が必要です。これからも多くのお客様に納得いただけるよう、心を込めて八幡靴づくりに励んでいきたいと思います。

(2011年3月取材)
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