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橋本晃一さん
『森の名手・名人』 橋本晃一さんを訪ねて
捨てる前にもうひと工夫する心を培う

皆さんは、林業に携わる人の中から100人だけが選ばれる『森の名手・名人』をご存知でしょうか。今回は、『森の名手・名人』100人に選ばれ、またその幅広い知識と経験を生かし、炭焼き体験教室や木工教室の講師をされている橋本晃一さんにお話を伺いました。

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炭焼きとの出会いと再開の経緯
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昔は、山で生活する者にとって炭焼きの技術は必要不可欠なものでした。当然、林業に携わる私にとっても、炭焼きは身に付けなければならない技術の一つでした。18歳の頃から、「技は盗んで覚えるもの」という信念を持った父親のもとで、炭焼きの技術習得に励みました。自らの窯を持ったのは24歳の頃で、独立して炭焼きを始めたのもこの頃からでした。その後、良質の炭を求め、何度も失敗しながら自ら研究を続け、炭焼きの技を磨きました。昔の職人の教育は「人から盗むもの」という考え方が当たり前でしたので、他人が良い炭を焼いたときには、その人の窯の中に入り形状や技術を研究しました。
社会環境が変化する中、家庭用燃料が炭から石油やガスに切り替わり、炭の需要は次第に減っていきました。そんな影響から私は炭焼きを辞め、20年ほど建設会社で定年まで働きました。
炭焼きを再開したのは、昔から恩恵を受けていた雑木が、今では邪魔物扱いされているのを見て、何とか捨てることなく利用できないかと考えたのがきっかけでした。今では炭焼きが珍しいらしく、遠方から見学に来る方も増えています。炭焼き教室を始めたのも、そんな方々から炭焼きを教えて欲しいという依頼を受けたことがきっかけでした。
炭の魅力
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良質の炭は銀色に輝き、金属のように硬く、叩くとなんともいえない音色を奏でます。炭の作り方は、アルミホイルで枝を巻きガスで炙るという簡単な方法から、窯で焼く方法など様々です。炭は、窯の形状や煙突の穴の空き具合、木の種類によって性質の異なったものになります。良質の炭にこだわりを持てば持つほど、炭焼きの奥深さを実感します。炭を焼く度に、どんな炭ができるのだろうかと焼き上がりをいつも楽しみにしています。
また、炭は脱臭剤や土壌改良剤など様々な用途で利用されています。炭で作った電池にはモーターを動かすほどの電力があり、6本程つなげばラジオを鳴らすこともできます。炭の利用方法には、まだまだ、今後も新たな可能性が秘められていると考えています。
そして、炭の最大の魅力は炭火のぬくもりにあります。昔から炭火は家族団欒の中心にあり、多くの人々の生活にやわらかいぬくもりを与えてきました。私にとって炭は、懐かしさを感じるものであり、すばらしい可能性を持った燃料なのです。
木工教室の活動
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炭焼き教室以外にも木工教室の講師をしています。木工教室では、雑木や木の実の特性を生かして、イスや巣箱などを作成しています。子供から高齢者まで幅広い年齢層の方に参加していただいており、様々なアイデア作品が生まれます。特に子供は、自由な発想で木の特性を生かしたすばらしい作品を作り出します。子供達の作品を見るたびに、表現力の豊かさと、頭のやわらかさに驚かされます。まさにものづくりの魅力を実感できる瞬間です。
活動を通して伝えていきたいこと
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photoまず、活動を通してものづくりの中にある「工夫する」ということの大切さを伝えたいです。つまり、「もったいない」という言葉を伝えたいのです。最近は物資が豊富で、生活の中で工夫すればまだ使えるものが、抵抗なく捨てられているように感じます。もちろん、作品を完成させる楽しさや喜びを知ってもらいたいという思いもあります。しかし、それ以上に今ある資源を大切にし、それが新たな可能性を秘めたものだという認識を持ってもらいたいと考えています。
また、人による山の開拓で森林が伐採され、山に生きる動物の生態系が崩壊しつつあります。山が害され、昔と比べ山の魅力が薄くなってきました。人も自然の恩恵を受けていることには間違いなく、山に育てられているということを多くの人に伝えていきたいです。
炭焼きにも、木工にも共通することですが、利用できるものを生かして使用する。捨てる前にもうひと工夫する。ものを大切にする心を培ってもらうために、これからも活動を続けていきたいと思います。
今後の目標
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近年では、炭焼きや木工を追求する人が減ってきました。私の技術やノウハウ、山への思いを多くの人に伝え、新たに後継者を育てていきたいと思います。より多くの人に、木工の楽しさや炭火のぬくもり、そして本来の山の魅力を伝えていきたいと考えています。
そして、今後は自分の納得のいく木工作品や良質の炭を作っていくだけでなく、皆が驚くような新しいもの、ひと工夫したものづくりに挑戦していきます。
(2006年2月取材)
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