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マシュー・リチャードさん
近江「むかで太鼓」保存会会長
    マシュー・リチャードさんを訪ねて
「むかで太鼓」は全国的に有名な近江の伝説「俵の藤太のむかで退治」を太鼓で表現する郷土芸能です。今回は、その近江「むかで太鼓」保存会会長のマシュー・リチャードさんにお話を伺いました。

【お問い合わせ先】

住  所 :滋賀県野洲市西河原2400
  野洲市観光物産協会内
  近江「むかで太鼓」保存会事務局
T E L :077−589−6316(土・日・祝休)

むかで太鼓とは
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近江の伝説「俵の藤太のむかで退治」を、和太鼓を中心に笛や鉦でリズミカルに表現した太鼓演奏の曲名です。「俵の藤太のむかで退治」は、俵藤太秀郷という武将が三上山に住み着いた大百足を、瀬田の唐橋から3本の矢で退治するという伝説です。「むかで太鼓」では、そのストーリーを「静かな里」「豊かな田園風景から」「残忍な大百足の出没」「風雨雷鳴の音」「戦いのシーン」「喜びの村人達の祭り太鼓」と各場面に分け、音だけで表現しています。ナレーションやスクリーンでの説明が入ることもありますが、基本的には太鼓などの音の強弱やリズムでストーリーを表現しますので、気持ちが伝わるようにと力を込めて太鼓を叩いています。「むかで太鼓」は太鼓の鼓動をうまくコントロールし、叩き手の感情を聞き手の心へと伝達していく素晴らしい表現方法だと感じています。
郷土芸能
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近江「むかで太鼓」保存会は、1985年に地元の方たちが「むかで伝説を郷土芸能にしよう」という目的で結成されました。現在の会員数は約60名で、そのうち活動メンバーが約20名います。保存会の活動メンバーは、小学生から社会人まで幅広い年齢層で構成され、地域のお祭りを中心に年間約30〜40回ほど公演を行っています。地域の公演では「むかで太鼓」を多くの人に野洲市の郷土芸能として伝えていくことを目標としています。また、今までにアメリカやマレーシア、オーストラリアなど海外での演奏も経験してきました。海外の公演では太鼓を日本の文化として紹介しています。

1回の公演では5名から20名が演奏し、全員が楽しんで演奏することを大切にしています。
きっかけ
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私はアメリカのペンシルベニア州出身で、国際交流支援の仕事のため1990年に来日しました。その後、1992年から野洲市(旧野洲町)に移り住みました。野洲市で毎年夏に行われるお祭りの時に「むかで太鼓」と初めて出会いました。太鼓の音を聴いた時に、その迫力ある音に言葉で表現できないぐらいの衝撃を受け、その時から太鼓を叩きたいと思うようになったのがきっかけです。

また、野洲市の姉妹都市であるミシガン州クリントンタウンシップとの文化交流のイベントがアメリカで行われた際に、野洲市国際交流協会職員であった私は「むかで太鼓」を日本文化の一つとして紹介したいと思いました。そこで「保存会」のメンバーに演奏を要請する中で「むかで太鼓」の魅力についての話を聞くことができました。

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私は話を聞くうちに太鼓への興味をさらに強め、保存会へ入会することを決めました。入会当初からとにかく太鼓を叩く楽しみを感じつつ、一生懸命に練習しました。活動をしていく中で私は「むかで太鼓」の実行役(演奏チーム)のリーダーとして活動メンバーの取りまとめをするようになり、2年ほど前に保存会会長を任されました。会長として現在もメンバーと共に太鼓の演奏をしています。演奏をする度に楽しさが増しています。
伝承
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翌日の公演にむけて練習するメンバーの皆さん
公演では太鼓を叩く楽しさや奏でる音の迫力など、自らが太鼓と初めて出会った時に受けた時の気持ちを多くの人に感じてもらいたいと強く思い、太鼓を叩いています。

また、小学生を中心とする活動メンバーには、活動を通して「楽しく、力強く、礼儀正しく」という言葉を繰り返し伝えています。練習時間や公演で子供たちと一緒に太鼓を叩くことを通して、子供たちにその楽しさを伝えています。また、子供たちが太鼓という郷土芸能を通して力強く、礼儀正しく成長してほしいと願っています。伝統ある「むかで太鼓」を伝承するということは太鼓の技術だけではなく、演奏者の気持ちが人々の心に伝わらなければ意味がありません。太鼓は私にとって気持ちを伝える手段の一つでもあります。
目標
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練習にきていたメンバー
今後も地域での公演や海外公演を通して、「むかで太鼓」の面白さや楽しさを多くの人に伝えていきたいと考えています。そして、多くの人に太鼓の素晴らしい『鼓動』とメンバーの気持ちの『鼓動』を感じていただきたいと考えています。特に地域の人々には、素晴らしい伝統と太鼓演奏の楽しさを広めていきたいです。

保存会では「むかで太鼓」だけではなく、天保義民をテーマとした「一揆太鼓」や銅鐸をテーマとした「銅鐸太鼓」など他にも7曲程の作品があり、「むかで太鼓」と共に多くの人々に伝えていきたいと考えています。また、その中で新しい曲作りにもチャレンジしていきたいと考えています。今後は、野洲の歴史や日本の文化だけでなく、太鼓を叩く楽しさや気持ちを伝える喜びも伝承していきたいです。
(2005年3月取材)
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