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工房で空き缶を使って楽器を製作中。 代表の河合正雄さん |
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手づくり楽器を作り始めたきっかけをお聞かせ下さい。 |
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私は演劇を中心にした作曲家として、300曲を超える楽曲を劇団に提供していました。その活動の中で特にヨーロッパの音楽劇団に強い興味を持ちました。当時のヨーロッパでは、1つの劇団で音楽と演劇のバランスが片寄ることなく高いレベルで成り立っており、質の高い公演がされていました。その影響から、演劇、音楽、歌、楽器、何でもできる音楽劇団を結成したいと考えるようになりました。各国の演劇には現地の音楽が必要であり、そのためには現地の楽器が必要となりました。当時は海外の楽器がなかなか手に入らず、その頃から手づくり楽器を作成して現地の音を作っていました。楽器を作っていく中で、現在の生活に潜む色々な音を使って色々な表現をしていきたいと考えるようになり、メンバーを募り『音楽劇団てんてこ』を結成しました。
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楽器を作り始めて楽しかったことはどんなことですか。 |
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音は人間の生活から生まれるもので、音を鳴らすことによって音楽になります。多くの人が楽器に対して難しいイメージを持っているように思いますが、音の出る原理はそれほど難しくはありません。
周りを見回せば、楽器になる小材料は山ほどあり、またその素材は色々な音を発します。音は人の心に一つの感情を作り出し、音程やリズム、違う音との組み合わせなど、音をうまくコントロールすることにより、心の中に芽生えた感情をさらに拡げていくことができます。人のこころを拡大していくことこそが音楽の持っている芸術性だと考えています。
音楽活動の中で新しい音と出会い、音程やリズムをコントロールすることにより、人の心がさらに変化していくというところに音楽の楽しさを感じます。手づくり楽器を通して、音楽が身近で楽しいものであることを、より多くの人に理解していただきたいと感じています。 |
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現在はどんな活動をされていますか。 |
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子供を対象に手づくり楽器体験や公演をされています。
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今年5月より稽古場を守山市石田町に移し、ようやく本格的に活動する環境が整ってきました。メンバーは9人で、全員が音楽もしくは演劇の経験者です。
公演回数は年間約140回に及び、『テラムジカてんてこ』と『音楽劇団てんてこ』という、2つの形態で活動しています。
『テラムジカてんてこ』は聴かせる音楽を追及しており、手づくり楽器による究極の団体として全世界に広めることを目的とし、すでに韓国公演も行いました。
『音楽劇団てんてこ』は近畿を中心に、音楽の楽しさや多様性を広めることを目的として活動しています。近頃では環境問題の影響もあり、環境保護という観点で出演依頼が増えています。また、小学校や養護学校での公演や手づくり楽器のワークショップの依頼も多く、子供から大人まで観客層にとらわれない活動を展開しています。 |
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活動を通して伝えたいことを教えて下さい。 |
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身の回りにあるものが楽器になると、大人でも子供でも気持ちが豊かになります。私達はバケツや空き缶、フライパン等を用いて様々な音楽を奏でます。子供はそれらの楽器から奏でられる音を聞くと純粋な反応を示します。手づくり楽器での演奏は、まだ常識にとらわれていない子供にとっては不思議なことではありません。むしろ、「楽しそう」「やってみたい」と感じるようです。大人は学問としての音楽を勉強してきていることで、生活の中から生まれた音を音楽として聴くことが難しくなっています。
現在の教育ではある一定条件の中で正解、不正解が判断されています。その為、一定の条件下では即対応することが出来ますが、条件が変わったり、条件が無くなったりすると対応できなくなる危険性を持っているように思います。また、一定の条件に縛られて自由に表現が出来ないという一面も持っています。もちろん常識という条件を理解した上で判断することが教育の大きな役割ですので、私達は課外授業の一環として多様な条件判断、条件の無い中での自由な発想を子供達に伝えていきたいと考えています。音楽は音響心理学の側面があり、子供たちには無限の表現方法を身に付けてもらいたいと考えています。1回の公演時間は約1時間から2時間と短い時間ですが、形にこだわらない多様な表現をダイレクトに理解してもらい、子供一人ひとりが条件に縛られること無く、また条件を使い分けて自由な表現力を身に付けてくれることを願っています。 |
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今後の目標をお聞かせ下さい。 |
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舞台においては聴き手への感じさせ方が、特に大切だと感じています。今後は音楽演奏の技術的なレベルよりも、「どう伝えたらどう感じ取られるか」というエンターティナーとしての能力を磨き、音の発信と受信をコントロールできる音楽集団にしていきたいと思います。また、日常生活で当たり前に発生している身の回りの音を、メンバー全員がもう一度見直し、絶えず音楽を発展させていこうとする気持ちをメンバー一人ひとりに伝えていきたいと考えています。 |
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(2004年8月取材) |
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