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辻みよ子さん
愛知川町伝承工芸「びん細工手まり」保存会
辻みよ子さんを訪ねて
今回は、愛知川町のシンボルである伝承工芸「びん細工手まり」を地域振興の宝として広く伝え、その技術の灯が消えることのないようにと、活動されている保存会の代表辻みよ子さんにお話を伺いました。

■びん細工手まりへの問い合わせは「愛知川町びんてまりの館」まで

愛知川町びんてまりの館
愛知川町びんてまりの館
住所/滋賀県愛知郡愛知川町市1673
TEL/0749-42-4114
開館時間/10:00〜18:00
休館日/月・火曜日、祝日、毎月最終木曜日、年末年始
入館料/無料

びん細工手まりの歴史と魅力について教えて下さい。
びん細工手まりとして一番古いものは、160年位前のものと聞いています。愛知川町に残る最古のびん細工手まりは、80年程前に嫁入り道具として愛知川町内の藤居家に送られてきたもので、今でも藤居家では家宝として大事に保管されています。現在、びん細工手まりは愛知川町のほか全国でも数ヶ所でしか作られていません。

びん細工手まりの魅力は、同じものを作っていても二つとして同じものはできないことです。同じ柄、同じ作り方で作っているつもりでも、その時々の気持ちや感情によって、表現したい色や模様の出来が全く違うものになります。時間をかければ良いものができるわけではなく、良いものを作りたいという気持ちが大切になります。

びん細工手まりは、作った人の気持ちや感情をそのまま映し出します。また、一つ完成しても「ここはこうしたほうが良かったかな」と思うことが絶えずあり、自分の中で満足できるものは10個作ってやっと1つできるぐらいです。悔しい気持ちもありますが納得できるものを作りたくて、次々と創作意欲が沸き起こってきます。それから、手まりをびんの中に入れる前と、びんの中に入れて見る時とでは、まるで見え方が違います。そんな不思議さも魅力の一つだと思いますし、実際作ってみないと分からないものでもあります。
びん細工手まり保存会が誕生した経緯と取り組みについてお聞かせ下さい。
愛知川町で一人で細々とびん細工手まりを作り続けられていた青木ひろさんが亡くなられたことが契機となり、愛知川町の教育委員会の方々が先頭に立ち、「このような素晴らしいものが無くなってしまうのは惜しい」ということで町の人々に呼びかけたところ、町内でも保存の声が高まり、びん細工手まり保存会が誕生しました。

私自身は「私でもこんな素晴らしいものが作れるかな?」という多少不安な思いもありましたが、びん細工手まりを一目見た時、あまりの美しさに魅了されるとともに、びん細工手まりを愛知川町の宝として伝えていかなければいけないと強く感じました。最初は、青木ひろさんのびん細工手まり作りを見続けてこられたご主人から大まかな作り方を教えていただきました。しかし、細かい部分になるとやはり試行錯誤の連続でした。それでもこの大まかな作り方を最初に教えていただいたことが現在の活動のきっかけとなりました。

保存会の会員は300名を超え、その中の12名が指導者として月一回研究会を開いています。「私はこんな柄のものができたからみんなでやってみよう」という発表の場にしたり、みんなで同じテーマのものに挑戦したりする場としています。常に保存会のメンバーは「私たちにできるのだから、あなたにもできますよ」という考え方を大切にしています。そして、びん細工手まりの研究を重ねて多くの方に興味を持っていただけるように、また少しでも多くの良い作品を作り出していくように努力しています。伝承工芸と聞くと、とっつきにくい感じがするかもしれませんが、私たちは伝承工芸を親しみやすいものにしていきたいと考えています。

その他にも初心者講習会を開き、町外の方にも「ふるさと体験塾」という形で参加いただいています。講習会では子離れ、孫離れしたぐらいの年齢の方を中心に91歳の方まで出席していただいています。ある時、お嫁さんとお姑さんが参加されました。一つのものを作るという気持ちが家族の仲の良さの表れでもあり、非常に素晴らしいことだと思いました。びん細工手まりは、「中が良く(仲が良く)見える丸い(家庭円満)まり」と説明されていますが、それは外側の形だけでなく製作の工程からも感じることが出来るのだと改めて気づきました。

保存会としては、びん細工手まりを作る技術だけを伝承するだけでなく、まずはその素晴らしさを多くの方に理解していただき、一緒にびん細工手まりを作り、その楽しさ、完成後の喜びを感じていただきたいと考えています。また、2000年12月には愛知川町びんてまりの館が開館し、作品の展示だけでなくパネルや映像で分かりやすく製作工程を解説しています。町内の方だけでなく、県外はもちろん外国からも見学に来ていただき、非常に嬉しく感じています。

保存活動が順調に進んでいるように思われますが、活動当初に苦労された点をお聞かせください。
やはり作り始めた当初は、どんな柄があるかも知らなかったので、手まりの通信教育や作り方の本を読みながらという手探りの状態でした。そして、徐々に慣れてくると次は簡単な柄ではもの足りず、難しい柄に挑戦していくようになりました。しかし、なかなか作り方までは記載されているものが無く、写真を虫メガネで眺めては一晩中悩んだこともありました。作り方がパッとひらめいた時には夜中にこっそり作ってみたりと、10年ほど前までは、伝承していくためにしっかりとした技術を修得することに苦労しました。最近では、あらゆる人々の心を引きつけられる作品を作ろうと研究していますが、どのような柄にすればいいのか考えるのがなかなか大変です。
今後の夢や目標をお聞かせ下さい。
最近では講習会への参加希望の方が大変多く、希望者の中から抽選で講習会に参加していただいているような状態です。手まり作りを教えるには、ある程度個人的に教えていく必要があります。大人数を前に1人の講師が説明する方法でも一応完成することはできますが、やはり良いものを作っていただきたい気持ちから、できるだけ少人数での講習会が望ましいと考えています。今後は、講師をもう少し増やせるように研究会での取り組みを重視して、講習会の参加希望者全員に参加していただけるようにしていきたいと思います。

びん細工手まりは愛知川町の伝承工芸品として意匠登録されています。このような立派なものを残してくれた故人の方々のためにも、技術をみがきあげ、より一層価値あるものとして残していかなければいけないという使命感を持っています。そのためにも誰が見ても素晴らしいと思っていただける作品を作れるようになりたいと思います。そして、多くの方々に作り方をお伝えし、今後ますます、びん細工手まりの美しさが増していくことを期待しています。
(2002年11月取材)
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