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小原隆史さん
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NPO法人琵琶湖ローイングCLUB代表
小原隆史さんを訪ねて
障がいがあっても真ん中で活躍できる場を、
と琵琶湖を拠点に障がい者ボート競技（パラローイング）
の選手育成・普及活動に取り組む小原隆史さん。
広がりを見せるその活動についてうかがいました。
小原 隆史さん おばら たかし
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互いの違いを思いやるボートは究極の団体競技
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| ▲漕ぎ手4名と舵を取るコックス1名で組むフォア用のボート |
障がい者ボート競技、パラローイングは1000mの直線コースで速さを競います。
種目は1人乗り、2人乗り、そして漕ぎ手4名と舵を取るコックス1名で組むフォアの3種。
フォアの場合、漕ぎ手は前後に動くシートに座った状態で足先を固定し、
スクワットのように膝を屈伸させ、その力を利用してオールで水を押し、
船を進めてゆきます。腕力勝負と思われがちですが、脚も体幹も使う全身運動なんですね。
1人乗り、2人乗りはシートが固定されていて、車いす利用者などが選手になります。
いずれの種目もパラリンピックの公式競技です。
ボートはチームの誰か1人だけが強くても曲がって進んでしまうもの。
皆の息が合わないとまっすぐ速く進めません。パラローイングでも身体・
視覚などに違う障がいのある選手が互いに目配り、気配りして漕ぎの強さやリズムを合わせている。
チームで協調することを常にやっています。
ボート競技はヒーローのいらない、究極の団体スポーツなのです。
強い想いが現実に、一歩踏み出すことで集まった仲間
僕がパラローイングに関わるきっかけは娘の存在にあります。
彼女は生まれつき脚に不自由があり、小学、中学となかなかスポーツを楽しめる機会が少なかった。
その姿を見てきて、親の自分が何かできないかと考え始めました。
僕には高校から大学、社会人と選手を10年続けた経験があり、
ボートなら教えられます。障がいがあっても大丈夫かと調べ、
少し工夫すればできるパラローイングを知りました。
そのクラブを作ればきっと仲間ができる、楽しい居場所にもなる。
想いは膨らみ、やってみようと決意しました。
その気持ちだけで動き出したとき、
出会ったのがデザインで社会問題を解決する活動をしていた牧文彦さんです。
牧さんは「パラローイングのNPO法人はまだない、関わりたい人も多いのでは」
と広報の舵取りを引き受けてくれました。
もちろん選手も募りました。まず声をかけたのは、
娘と同じ障がいのある谷口佑樹君。彼は陸上部のマネージャーなどサポート役をしてきたけれど、
本当は選手になりたかったんです。すぐに挑戦を決めてくれました。
さらにパラローイング経験者、そして娘も加わって、2013年12月
「琵琶湖ローイングCLUB（通称びわろー）」がスタート。
パラローイングを研究してきた現役ボート選手がコーチに、
また障がい者医療に積極的に取り組む医師がチームドクターにと、
足りない部分をカバーしてくれる人も集まりました。
障がいのある人もない人も一緒にスポーツを楽しめる社会に
現在びわろーのメンバーは選手12名を含む25名に。
各々普段は自主トレを、月2回は琵琶湖・瀬田川に集まり乗艇練習をします。
レースにも出場して悔しさ、楽しさを味わい、体型も顔つきも変わってきましたね。
この春には4選手が日本代表となり、イタリアで開かれたリオパラリンピック最終予選に出場しました。
予選通過はできなかったけれど、すごい経験をしたと思います。
僕は監督として選手たちに、できることは全部自分でやるよう言っています。
サポートしてもらうのが当たり前、とは思ってほしくないんですよ。
今年はボート体験やクイズラリーなどを行う「びわろー祭」の企画を彼らに任せました。
どうすれば活動を広く知ってもらえるか、仲間や資金を集められるか、
自主的に考えて動いてほしい。
びわろーは障がい者が真ん中で活躍できる場所ですから。
今後の目標は2020年の東京パラリンピック出場、
そして行政を巻き込んで地域の子どもやお年寄りにボートを教える場をつくり、
選手たちがスポーツインストラクターになること。
さらには、障がいの有無に関わらず一緒にスポーツを楽しめる場所を日本中に増やせればと考えています。障がい者スポーツに取り組まれている他団体とも協力し合って、全国に展開させていきたいですね。
(2016年6月取材)
